学校法人 きのくに子どもの村学園 南アルプス子どもの村小学校・中学校

                   

         
     南アルプス子どもの村小学校・中学校       
                       〒400-0203 山梨県南アルプス市徳永1717  Tel 055-287-8205 Fax 055-287-8206   絵文字:メール e-mail   :   minami-alps@kinokuni.ac.jp      

  ついに、発売!黎明書房より
  2013年7月発刊! 

学園の詳細


 南アルプスの風物詩
 スモモの交配の季節









 スコットランド2019
絵文字:星 帰国しました!絵文字:星


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    自由学校の設計(増補版)
    黎明書房 2009.7.25発行




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学校評価 2018.8.1 作成


南アルプス子どもの村小学校

南アルプス子どもの村中学校

 

 

 

 

現 状 と 課 題

           

             

 

 201881

 

 

 




も  く  じ


1.沿  革

 2.施設の概要

3.学校づくりの理念と実際

 4.学校の現状

 5.今後の課題

6.おわりに

 

 

 

 

 

 

 

学校法人 きのくに子どもの村学園




 

1.    沿 革

 南アルプス子どもの村小学校は20097月に、学校法人きのくに子どもの村学園が山梨県知事から設置認可を受け、同年10月に山梨県南アルプス市徳永1717に開校した。施設は、果樹園に囲まれた住宅街に設置され、甲府駅から車で30分の距離にある。

 開校時には小学校校舎と寮1棟が用意された。開校時の子どもの数は、第14学年の17人である。

  2010年には在籍する子どもの数は70人をこえ、第2寮を増築してベッドの数を確保した。

 小学校開校から3年後の20124月には、中学校校舎が小学校に併設して建設され開設された。初年度の中学校の入学生は10名である。これに間に合うように第3寮も建築された。

 平成26年度の山梨県森林加速化・林業再生事業により山梨県産材をつかって体育館が建築され、山梨県から助成を受け、2014年の4月に完成した。

 寮には、全児童生徒の約50パーセントが共同生活している。

 

2.    施 設 の 概 要

 

1.校地 グラウンドほか

4458.28

(小中:学校法人所有)

2.校舎(2棟)

898.80

(小:学校法人所有)

 

465.00

(中:学校法人所有)

3.体育館(1棟)

552.80

(小中:学校法人所有)

4.寄宿舎(3棟)

250.00

(小:学校法人所有)

 

217.78

(小:学校法人所有)

 

277.00

(中:学校法人所有)

 

現在の校地、校舎、寄宿舎はすべて小学校と中学校が共用している。校舎、体育館、寄宿舎ともに耐震基準を満たしている。

 

3.    学 校 づ く り の 理 念 と 実際  

 本校の教育理念は、学校法人の経営するきのくに子どもの村小学校、そして、きのくに子どもの村中学校のそれとまったく同一であり、A..ニイルおよびジョン・デューイの教育理論を基礎にして目標とすべき子ども像と、その目的追求のための基本原則、そして具体的な教育活動の形態を以下のように設定している。

 

(1)目標とする子ども像

 現代の学校教育は、知識と技能の伝達に主たる目標が置かれ、子どもたちの人格の調和的あるいは全面的な発達がおろそかにされているきらいがある。そのためにしばしばメディアをにぎわせるような歪んだパーソナリティの人間を育てる危険がひそんでいる。また既成の知識等の伝達に異常な重きが置かれているために、子ども自身が創意工夫をはたらかせて発見したり創造したりする力を十分に育てているとはいいがたい。その結果、OECDの国際比較調査に見られるように、創造的に考える力の育成という面で立ち遅れている。

 以上の批判的見地に立って本学園では、子どもたちが感情、知性、社会性(人間関係)のいずれの面においても自由な子ども(人間)へと育つのを援助したいと考えている。自由な子どもとは、具体的には次のような子どもである。

 

A.感情面の自由

  無意識の解放……内面の不安、緊張、自己否定感にとらわれていない。

  意識面の自由……自己意識が明瞭で、自信や生きる喜びに満ちている。

 

B.知性の自由

  創造的思考………実際的な問題に敏感で、仮説を立て、行動で検証する。

  多方面の興味……多くの事象に好奇心旺盛で、情報収集の意欲を持つ。

 

C.人間関係の自由

  自己の確立………強い自我を持ち自己主張ができる。

  人間関係のすべ……まわりの人々と目的を共有し役割分担ができる。

 

(2)基本原則

 教師による管理にかたより、個人差を軽視し、既成の知識や技能の伝達を主要業務とする従来の方式では上記の自由な子どもの発達は期待できない。われわれは、下記の原則をできるだけ徹底し、かつこれらの原則をバラバラにではなく、むしろ統合的に実行することをめざす。

 

A.自己決定の原則

ニイルのサマーヒルの実践をモデルにしている。子ども自身が学習、共同生活、およびその他の諸活動について話し合い、それをもとに決定するのを大事にする。あるいは大人から提示された複数の選択肢から選ぶ。その学習等の評価に子どもが参加する。

この際、教師はふつうの学校におけるよりもはるかに周到な準備や下調べが要求される。子どもの自由を尊重する教師は楽ができるわけではない。むしろ子どもの自由と教師の忙しさは比例するのだ。

 

B.個性化の原則

画一主義の一斉教授方式を避け、個人差を尊重して学習の多様化を図る。たんなる学習の個別化ではなく、むしろ興味・関心・到達度の違いを認め、同時並行的に質やレベルの違う学習の機会を多くする。また、個性尊重というと、ともすれば「一人学習」と混同されがちであるが、個性尊重と集団活動は対立するものではなくて、むしろ生き生きとした集団の中でこそ個性は輝きを増す。

 

C.体験学習の原則

教科書や問題集を中心にした既成の知識の伝達や機械的な反復学習ではなく、子ども自身が実際的な問題や課題に取り組み、知識や技能を創造するタイプの学習をおこなう。手や体をつかうけれども、何よりも頭をつかう知的探求という性格の学習形態である。デューイの「活動的な仕事」の理論を援用している。

 

(3)学習等の形 態と学級編成

上記の自己決定、個性尊重、体験学習の3原則は、それぞれが重視されると同時に、互いに関連しあって学習の形態を形成し、カリキュラムと実際の教育活動を組織する。

 

A.プロジェクト

 3原則が調和的に実行される総合学習の形態である。子どもたちは、個人差や個性を大事にされつつ、自発的に実際的な生活にそくしたプロジェクトに取り組んで、統合的に多方面の発達をはかる。出発点となる活動のテーマはデューイのいう「基本的な社会生活」、つまり衣食住またはそれに類する活動で、子どもたちの日常生活から題材をとって、原則として1年間を通じて追究する。小学校では1週間に14時限がこれにあてられる。中学校も同様に、身近な生活と関連して学ぶことを目指しており、体験的な学習を重視している。

 

B.基礎学習、教科学習

 自己決定と個性尊重の原則が前面に出て、抽象的な題材もつかわれる形態である。ただし、できるだけプロジェクトの活動から題材をとり、また得られた知識や技能をプロジェクトで活用する。

 小学校では「ことば」と「かず」の2領域があり、国語と算数に対応するが、その中でもっとも基礎的な内容を扱う。週8時間。第1〜3学年まで国際理解教育を週1時間、第4、5学年では週1時間、第6学年では週2時間を外国語活動にあてている。

 中学校では、国語、社会、数学、理科、外国語(英語)の個別学習を行い、生活に根ざした経験的な学習をすることを重視している。

 

 

C.個別学習

 個性化と体験の原則は十分に維持されつつ、大人の指導や助言がほかの形態よりも多用される時間である。得意な領域をさらに伸ばす場合や、不得手な課題の復習などにあてられる。ただし、現在のところ小学校ではプロジェクトの中に組み込まれている。中学校では主としていわゆる主要5教科の自主学習にあてられている(ただし各教科の担当教員が同席する)。週2時間。

 

D.自由選択、保健体育

 グループ活動である。小学校では主として図画工作、音楽、体育、技術家庭の内容を複数用意して子どもが1学期単位で選択する。合計週7時間。

  

E.ミーティング

 子どもの自己決定を重視する学校では必然的に話し合いが不可欠になる。時間割上は週1時間であるが、放課後や諸教科の中でも寮生活の中でも話し合いは頻繁に開かれ、個人として、また共同生活の一員として成長するのを促す上でとても重要な役割を果たしている。

 

F.学級編成

 クラスは完全縦割り編成をとっている。つまり小学校の場合、どのクラスにも1学年から6学年までの子どもが属している(中学校は1学年から3学年まで)。子どもたちは、テーマを異にする複数のクラスの活動や担任を見極めてみずから選択する。この学校で最も重要な教育活動であるプロジェクトでどのテーマを追求するかは、学年や年齢よりも優先されるべき要因であるからだ。小学校の基礎学習もこの異年齢グループでおこなわれる。1学年の定員が20名と少なく、各クラスの人数もおよそ25人程度である上に、それぞれに2人以上の大人を配置するティーム・ティーチング方式がこれを可能にしている。

 

4.    学 校 の 現 状

 

(1)学校の組織

A.役員会

 本校を設置経営するのは、学校法人きのくに子どもの村学園(和歌山県橋本市彦谷511992年3月、和歌山県知事より認可)である。理事は、堀真一郎理事長を含めて9名、監事2名、評議員は19名である。

.教職員 (2018年度)

  本務職員……教員:小学校、中学校あわせて18名(うち2名がそれぞれの校長)

        職員:事務職員2名 寮職員2名

 

  兼務職員……教員:6名(うち1名は中学校の校長、うち5名は小中を兼ねる)

        寮職員2名

  その他 ……学校医、学校歯科医、学校薬剤師 各1

 

C.子ども(201881日現在)

 小学校………132

 中学校………56名 

  188名(うち通学者は94名。寮に宿泊して週末帰宅する者は89名)

 

D.保護者会

 保護者会は「ゆ甲斐な会」と呼ばれ、主に保護者と学校職員との交流をはかって年間3回程度の懇親会などを開いている。

 

(2)施設および設備

 本校はオープンプラン方式の校舎である。教室それぞれが連続して配置され、壁は可動式の扉状になっている。各教室は扉を開放して子どもたちが行き来して活動しやすいようになっている。

 すべての建物は木造建築である。基本となる骨組みは、カラマツの集成材(LVL : Laminated Veneer  Lumber )を使用して建設されており、木材の温かい質感を保ちつつ強固に設計されている。

 小・中学校ともに、体験を重視した学習形態をとっているため、活動に際しては柔軟なグルーピングが行なわれ、教室の外で学ぶ機会も多くある。各校舎にはホールがあり、教室とホールを行き来して学べるように工夫されている。また水道や道具を必要なときにすぐに使えるように配備され、図書などがすぐ手に取れる位置に並べてある。

 定員が各学年ともに20名であるため、今のところ大きな不便は感じていない。

 寮は木造2階建てで、収容能力はおよそ100名である。各部屋の定員は2-8名で、個室はない。4名の寮職員が生活面のケアをおこなっている。遠隔地から通う子どもは寮に滞在し、金曜の放課後に帰宅して月曜日の朝11時までに登校する。

 グラウンドは広いとはいえない上に、雑草の勢いが強く、実際の面積すべてを有効に使用しているとはいえない状況にある。薬品による処理以外に効果ある除草法はないと思われるが、子どもたちの健康を考慮するとこれを日常的に使うのはためらわれる。

 後述するように、小学校、中学校ともに校具、教具、図書などの備品は必ずしも豊富とはいえない。しかも体験学習中心の教育を続けるには、消耗品類も多く必要になる。今のところ必要最低限の校具等は何とか用意されているが、今後の整備に工夫が必要である。

 

 





 


(3)財政状況

 学校法人きのくに子どもの村学園は、現在、和歌山県、福井県、山梨県、福岡県で、小学校4校、中学校4校、高等専修学校1校を経営しており、さらに英国スコットランドに元私立学校を研修宿泊施設として有している。全児童生徒数が700人を切る小規模な学園であるが、さいわい借入金ゼロの経営を続けてきた。収支計算書、公認会計士の監査証明についても、現在校生の保護者、または入学を希望の保護者からの要請があれば開示する。

 なお学校法人の方針により専任職員の給与は、年齢、職種、資格を問わず、基本給が全員同額である。

 

(4)教育活動

 A.プロジェクト

 各クラスの2名の担任は、予想されるおおよその活動内容を年度初めに子どもにアナウンスし、子どもたちはこれを聞いて自分の属するクラスを選択する。クラスのメンバーが確定すると年間計画を策定し、子どもたちの感情、知性、社会性の各側面の発達の予想を立て、具体的な学習計画が出来上がる。これは職員全員の会議で検討され修正される。

また年度途中、定期的にクラスの生徒・児童の様子と活動内容についての報告がなされ、相互に前向きな批判とアドバイスをおこなう。年度末には1年間の経過が報告され、目的やねらいが達成されたかどうかの評価をおこない、次年度の計画に反映させる。

 2017年度については、十分に達成されたとはいえない目標もあったが、おおむね例年通りの成果が得られたと思われる。

 

B.基礎学習

基礎学習はプロジェクトのクラスがそのまま基礎集団となって同一時間帯におこなわれ、2人以上の大人が担当する。学年相当の手づくり学習材も多く用意される。学習材の多くが手づくりである理由は、プロジェクトや普段の生活から題材をとるからである。そのぶん教師は忙しいが、与えられた教材を決められた手順どおりに教えるよりも、内容と方法を子どもの実態にかんがみながら工夫できるのは、教師にとって大きな喜びとなっている。また子どもの学習モチベーションを高める上でも好都合であるし、個人差にもきめ細かく対応できる。

なお、本校には通常の通知簿や成績表の類のものはない。その代わりに一人ひとりの子どもの様子は各学期の終わりに「生活と学習の記録」として保護者に報告される。これは教科の成績というよりも、感情、知性、社会性の側面ごとに子どもの成長の様子を自由記述式で記録したものである。

 

C.自由選択

自由選択は、1学期単位で6-8個の活動から選択できる。中身の充実と選択の幅の広がりをさらに充実したものとしていけるように配慮している。

 

ミーティング

  前述のように、子ども集団が自発的にひとつの共同のプロジェクトに取り組もうとするとき、また共同生活をより快適なものにするためには、話し合いは不可欠である。心を通い合わせる仲間として、目標を共有し、役割を分担して大きな仕事に挑戦するためには、大小さまざまな形のミーティングを開かなくてはならない。子どもたちの話し合いのない体験学習は、教師主導のたんなる肉体作業におちいる危険がある。南アルプス子どもの村では毎週火曜日に全校集会が開かれ、行事の計画、もめごとの処理、さまざまな社会問題についての議論などをおこなう。このミーティングを実りゆたかなものにするためのミーティング委員会も設置されている。

 このほか、各クラスでも、寮でもミーティングはひんぱんにおこなわれ、「自分たち自身の生きかたをする自由(ニイル)」の習得のためのよい機会となっている。

 さらにミーティングは別の教育的意義をもっている。さまざまな問題に気づき、これをことばで明瞭に整理して、自分の考えをまとめ、他に伝える力をつけるという意味で、子どもたちの本来の意味での言語能力を伸ばすためのよい経験となっている。漢字ドリルよりはるかに国語の学習になろう。

 ただし、子どもたちの中にミーティングが好きではないという声が聞かれることには注意を払う必要がある。その原因は、迷惑行為や約束違反の行動をした者の扱いなどで時間がかかるケースが少なくないことにある。「楽しい議題のときは長く、いやな議題のときは短く要領よく」というのが望ましい。大人の参加の仕方(発言の仕方とタイミング、議長へのサポートなど)が問われるところである。

 

E.見学、修学旅行、海外体験学習など

 南アルプス子どもの村は、小学校も中学校も、きのくに子どもの村学園の小中高とならんで、日本で最も校外へ出かける機会の多い学校である。プロジェクト学習の充実のためには、クラス単位の日帰りの見学は欠かせない。また各学期に一度は2泊程度で旅行に出かけ、プロジェクトにかんする情報を得る。近年は、学校法人がスコットランドに所有する施設(キルクハニティ子どもの村)へ1ヶ月程度の長い期間をかけて出かける機会もできている。

中学校の修学旅行は、毎年国内(710泊)と海外(イギリス、3週間)が、夏休み中に実施されている。これらは自由参加になっていて、どちらを選んでもよいし、毎年参加してもよく、またまったく参加しなくてもよい。実際には中学生のほとんどが3年間で1回は、どちらか、あるいは両方に参加している。3年連続で参加する者もある。小学生の修学旅行は、この学校ではめずらしく6年生だけが全員で参加する(3-4泊)。

 

 本校の修学旅行には、以下のようなほかでは見られない特長がある。

1.子どもたちが計画を立てる。

参加者がひんぱんに集まって、時間をかけて資料を収集し、旅程を立て、こまかく費用の計算をする。さらに宿泊する施設やフェリーの予約をとることも多い。行き先は、毎年、遠くになる。

2.旅行業者に頼らない。

計画の立案だけでなく、移動のほとんども職員がマイクロバスなどを運転しておこなう。したがって中身の充実からは考えられない少ない経費ですむ。たとえば小学生が4泊で九州を一周しても一人当たり3万円以内である。

  子どもが知恵をしぼって計画を立て、さまざまな情報を身につけ、仲間と夢を共有してその実現に向かって共に力を合わせるという意味において、修学旅行は本校の学習の中心であるプロジェクトのひとつの形態であるともいえよう。

 

F.学校行事

 本校の学校行事はあまり多くない。出かけることが多いので、最近は普通の遠足はほとんどおこなわれない。運動会はあるが、事前の練習にはほとんど時間をかけない。子どもと保護者と地域住民、そして卒業生などの親睦を目的とするイベントになっている。入学式、卒業式などは「入学を祝う会」「卒業を祝う会」と呼ばれ、それぞれに委員会ができて計画を立て、実際の進行も子どもがおこなう。

 そのほか学校行事としては、春まつり、秋まつり、和歌山校など学園の設置する他の学校との交流、隣接の公立校との交流、学校の主催する教育講座への参加、地域社会の伝統行事への参加などがあり、子どもたちの経験を豊かにするのに貢献している。

 

G.寮生活

 現在、全校の子どもの約5割が寮で生活している。いちばん遠くから来ているのは千葉県からである。寮生は金曜日の放課後に自宅に帰り、月曜日に帰校する。遠くから来る子どものために、月曜日は11時に授業が始まる。

 寮の中で子どもたちは思い思いに過ごしているが、ときには共同生活にありがちなトラブル(けんか、ものの貸し借り、持ち物の紛失など)が起きることもあり、必要に応じて全寮ミーティングが開かれる。お楽しみ会、お泊り自由の日、誕生会、クリスマス・パーティなどは子どもたちが自発的に計画して実行する。常駐の寮職員は各棟1名である。

 小学生にとって寮生活は重荷ではないかという懸念が示されることがある。とくにホームシックを心配する人は少なくない。しかしわれわれの経験では、低年齢の子どものほうがかえって早くホームシックを乗り越えていく。最もホームシックそのものは、決して否定的に見られるべきことではない。どの子でもほどほどにホームシックになるのがむしろ自然かもしれない。いずれにしても子どもは、大人が心配するほどはホームシックに悩んだりはしない。じっさい、寮生の大半が寮生活は楽しいと答えている。

 

H.卒業生

 中学の卒業生は57名(開校~2017年度まで)。内8名が学園の経営するきのくに国際高等専修学校へ進学した。そのほかは公立および私立の高校に進学している。学園全体では、卒業生の内、2割が同専修学校に進学し、そのほかは公立および私立の高校に進学しているが、ごく少数が海外へ留学する。その後、大学へ進学する者の割合は普通の学校の卒業生よりかなり高い。中にはアメリカの州立大学に入って宇宙工学を専攻している者もある。

ところで、ときおり「子どもの村の学力が心配だ」とか「高校に入ってほかの生徒についていけるのか」という質問が出ることがあるが、学園としてはとりたてて心配はしていない。とくに進学先の学力にかんしては、むしろ驚くほどのレベルにある子が多いようだ。

 

5. 今 後 の 課 題

(1)教育活動の深まり

 本校は、小学校が10年目を、また中学校は7年目の年度を迎えた。プロジェクトを中心とする教育計画はおおむね軌道に乗っていると考えられる。財政規模は小さく、施設も設備も十分とはいえないが、小規模校のよさを生かした教育活動が展開されている。しかし教育面の改善にはこれでよいというゴールはない。いっそうの研鑽と実験的な試みを続けたい。そのためには、教員の国内、海外、校内など各種の研修、相互の実践の検討、保護者等への啓蒙活動、思いを同じくする姉妹校その他との交流などを怠ってはならない。

教職員の研修にかんしては、現在のところほかの学校、とくに公立校に比べれば多額の助成をおこなっているが、今後ともその拡充を図りたい。

 

(2)啓蒙活動と横のつながり

 学校法人きのくに子どもの村学園は、これまで日本における「オルタナティヴ・スクール」の代表的なモデルとしての地位を占めてきた。とくに本校は自己所有の施設を持たない私立学校として、その後のユニークないくつかの学校の先駆けともなってきた。マスコミで取り上げられることも多く、見学者もあとを絶たない。国内に限らず、韓国をはじめ、海外からも注目を集めている。学園長の著作のうち2冊が韓国語に翻訳されている。学園ではこうした内外からの関心に応えて、さまざまな形で自分たちの教育理念や実績・実情について発信してきた。また、教育のあり方を考えるシンポジウムも毎年おこなっていて、時には韓国、イギリス、アメリカ、インドからも教師、高校生、教育関係者を招いて討論をしたり提案したりしている。

日本の学校教育の諸種の問題点がいまだ解決の方向に向かう気配が見られない今日、学園の果たすべき役割は大きい。従来の方式とは違うやり方が存在しうるということ、そして、それがしかるべき成果を挙げていることを、今後とも精力的に発信していきたい。そのためにも、いくつかの新しい学校との連携を深め、具体的な教育実践を通じて教育改革の必要性と可能性をアピールしたい。とりわけ法人内外にかかわらず横のつながりは大切に育てたいものである。

 

学園の設置する学校

きのくに子どもの村小学校

きのくに子どもの村中学校

きのくに国際高等専修学校

かつやま子どもの村小学校

かつやま子どもの村中学校

北九州子どもの村小学校

北九州子どもの村中学校

キルクハニティ子どもの村スクール(スコットランド)

姉妹校

りら創造芸術高等学校(和歌山県紀美野町)

 

(3)施設と財政

 南アルプス子どもの村小学校と南アルプス子どもの村中学校の物理的環境、つまり施設は決して十分とはいえない。児童数の増加とともに木工や料理など活動をする場所が不足してきている。教育の個性化をめざす教育現場では柔軟なグルーピングが求められる。つかう教室やホールについては、教員同士が工夫して使えるように相談しながら使っている。

備品類にしても買い入れたいものは多い。学校の車両はすべて中古であり、コンピューターも保護者からの寄付によるものが半数以上を占めている。

 しかし、あえて各学年の定員が20名の学校として発足した以上、ある程度の不便さはやむをえない。むしろ十分とはいえない施設を有効かつ創造的に活用し、人材をととのえれば相当の教育成果をあげうることもはっきりしてきた。

 財政状態は、前記のように決して余裕があるとはいえない。 南アルプスでは、これまで開校以来、授業料などの児童生徒納付金の改定を一切おこなわないで内部努力でしのいできた。今日の世界的な広がりを見せる経済不況の時代にあっては、授業料などの値上げは考えられないことが理由である。しかし学校通信や、サマースクール、教育講演会などの機会を通じて、本校のよさをアピールし続けたい。

 

 

付 記

 本稿では、通常の学校評価に添付される学外者による評価がない。それはこの学校が一般的な普通の学校とは理念と基本方針そして実践の原則を大きく異にしたユニークな学校であるというところにある。その理念と方針を十分に理解しない人がこれを評価するのは容易ではない。これを強行すれば、無用の誤解や勘違いに陥る懸念が生じる。学園の哲学と実践方式を十分に理解する人が評価をすれば、それは身内による評価とみなされる可能性がある。以上の理由により、少なくとも今年度までは他者による評価をおこなわないこととし、次年度以降の課題としたい。

 


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