3. 学 校 づ く り の 理 念 と 実際
本校の教育理念は、A.S.ニイルおよびジョン・デューイの教育理論を基礎にして目標とすべき子ども像と、その目的追求のための基本原則、そして具体的な教育活動の形態を以下のように設定している。この教育理念は法人内のいずれの学校でも変わらない。
(1) 目標とする子ども像
現代の学校教育は、知識と技能の伝達に主たる目標が置かれ、子どもたちの人格の調和的あるいは全面的な発達がおろそかにされているきらいがある。そのためにしばしばメディアをにぎわせるような不幸なパーソナリティの人間を育てるなど、さまざまな課題が指摘されている。また既成の知識等の伝達に異常な重きが置かれているために、子ども自身が創意工夫をはたらかせて発見したり創造したりする力を十分に育てているとはいいがたい。その結果、OECDの国際比較調査に見られるように、創造的に考える力の育成という面で立ち遅れている。
以上の批判的見地に立って本学園では、子どもたちが感情、知性、社会性(人間関係)のいずれの面においても自由な子ども(人間)へと育つのを援助したいと考えている。自由な子どもとは、具体的には次のような子どもである。
A.感情面の自由
無意識の解放……内面の不安、緊張、自己否定感にとらわれていない。
意識面の自由……自己意識が明瞭で、自信や生きる喜びに満ちている。
B.知性の自由
創造的思考………実際的な問題に敏感で、仮説を立て、行動で検証する。
多方面の興味……多くの事象に好奇心旺盛で、情報収集の意欲を持つ。
C.人間関係の自由
自己の確立………強い自我を持ち自己主張ができる。
人間関係の術……まわりの人々と目的を共有し役割分担ができる。
(2) 基本原則
教師による管理にかたより、個人差を軽視し、既成の知識や技能の伝達を主要業務とする従来の方式では上記の自由な子どもの発達は期待できない。われわれは、下記の原則をできるだけ徹底し、かつこれらの原則をバラバラにではなく、むしろ統合的に実行することをめざす。
A.自己決定の原則
ニイルのサマーヒルの実践をモデルにしている。子ども自身が学習、共同生活、およびその他の諸活動について話し合い、それをもとに決定するのを大事にする。あるいは大人から提示された複数の選択肢から選ぶ。その学習等の評価に子どもが参加する。
この際、教師はふつうの学校におけるよりもはるかに周到な準備や下調べが要求される。子どもの自由を尊重する教師は楽ができるわけではない。むしろ子どもの自由と教師の忙しさは比例する。
B.個性化の原則
画一主義の一斉教授方式を避け、個人差を尊重して学習の多様化を図る。たんなる学習の個別化ではなく、むしろ興味・関心・到達度の違いを認め、同時並行的に質やレベルの違う学習の機会を多くする。また、個性尊重というと、ともすれば「一人学習」と混同されがちであるが、個性尊重と集団活動は対立するものではなくて、むしろ生き生きとした集団の中でこそ個性は輝きを増す。
C.体験学習の原則
教科書や問題集を中心にした既成の知識の伝達や機械的な反復学習ではなく、子ども自身が実際的な問題や課題に取り組み、知識や技能を創造するタイプの学習をおこなう。手や体をつかうけれども、何よりも頭をつかう知的探求という性格の学習形態である。デューイの「活動的な仕事」の理論を援用している。